我が国電子業界は2001年度のITバブル不況の影響下からようやく脱出しつつあります
が、アメリカ、台湾、韓国等との競争の激化に加え、電子機器セットメーカの中国生産
移管の影響を受けて、国内生産量の減少と国際競争力の激化に苦しめられております。
加えて時代を牽引する製品が見当たらないことも心理的な圧迫となっております。
一般的に我が国の電子産業は、要素技術に強く、システム化といった統合技術に弱い
ことが指摘されています。こうした強み・弱みを象徴するように半導体・プリント配線
板設計のCADシステムはアメリカ企業に占有されております。しかしながら、要素技術
を支える材料・部品・製造設備は我が国が依然として世界をリードする立場にありま
す。
戦後のアメリカに追い付き、追い越せのスローガンは、追い付いたと思った瞬間から
始まったバブル経済の崩壊とともに、目標を失った我が国の産業の低迷を招き、加えて
1990年代からスタートしたデジタル社会により半導体・パーソナルコンピュータの世界
では、我が国は頂点から転げ落ち底が見えにくい状況にあることはご承知のところで
す。
こうした事態の低迷は、ことさらにマスコミの報道により悲観的な精神状態を経済界
にも投げかけておりますが、我が国の強みを更に強化し、弱みを補えば十分に新しいビ
ジネスチャンスが生まれ、異なったパラダイムでの事業展開が可能になることは経営学
上の机上の空論ではありません。
今回の講演では、聴講者の皆さんの視点を変えて頂くために、我が国の電子産業の実
態を実装技術の切り口から解説するとともに、要素技術が産業構造を変革する事例を紹
介し、また今後5年以内に登場する予定の脱インテル・マイクロソフトのデジタル世界
についての構想をご紹介いただく予定です。
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